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ちまちまっこ 外観
貧しい時代の貧弱なコたちを、目一杯綺麗で可愛く使ってあげようと、デザインしました。化繊でテラテラだけど可愛いデザインの、安い既製のドレスを着て、発表会の舞台に立つ女の子・・みたいなイメージです。
安いアルミシャーシを徹底的に紙ヤスリで磨き、自動車補修用のワインレッドのスプレーで塗装し、真空管の灯りが反射する様に、更にツヤ出し仕上げをしました。真空管のソケット留め以外のネジは表面に出ない様に、内部でかなりの工夫をしています。
普通の真空管アンプなら、黒や灰色のトランスやテカテカのコンデンサーが、「これ見よがし」に並びますが、そう言うのは一切排してます。唯一のお供は、緑色に塗り直したラジオ用の電源トランスです。
使用真空管は手前2本が出力管の3Y-P1で、右が松下製、左は英国HALTRONマークですが、形状や特徴から判断すると、マツダ(マツダは東芝のブランド名)製に間違いありません。奥のピンクの帽子を被っているのが初段管の6Z-DH3でマツダ製です。左端は整流管80HKで、これもマツダ製です。配置は前列と後列をわざとズラし、「全員」が見える様にしています。
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内部
はっきり言って「ぐちゃぐちゃ」状態です(苦笑)。タイガーの123号ラジオを直したのと同じ人物が作ったアンプとは思えません(笑)。何分これを作ったのは、タイガー修復の約15年前ですから・・・
本当はもっと整然と仕上げる筈でしたが、いざ組み上げてみると、電源の平滑コンデンサーが全然不足していてハムが多く、とにかく空いたスペースに詰められるだけコンデンサーを詰めました。その為、本来「電源部」「増幅部」に整然と分けていた配置は、その隙間の全てを、コンデンサーとその配線が埋める形になってしまいました。でもコンデンサーの大量投入で、最終的にはハムは皆無にまでなりました。
左側面に上下2つ並列なトランスが、ラジオ用の出力トランス、電源トランスは右上部に埋もれています。右下側面のトランスは、初段管用ヒータートランス、そのすぐ左の小さなトランスは、出力管用バイアス電源用トランスで、トランスは何と5つも使ってますが、「全てラジオ用部品と回路を使う」と言うコンセプトなので、チョークトランスは使っていません。
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回路
回路は基本的には、5球スーパーラジオの低周波部分と同じです。
初段は6Z-DH3(ロクゼットディーエイチスリー)。この球は国産5球スーパー用として開発されましたが、グリッドが頭に出ていて使い難く、僅か半年後にはグリッドを脚に出した使い易い6Z-DH3A(ロクゼットディーエイチスリーエー)が開発されて、それ以降はほとんど使われる事はありませんでした。この「ちまちまっこ」では6Z-DH3、6Z-DH3Aのどちらでも使える様にしてあります。
出力管は3Y-P1(サンワイピーワン)。戦前にラジオに使われ製造中止となっていた47B(ヨンナナビー)と言う球の代替品として、戦時中に開発された12Z-P1(ジュウニゼットピーワン)を元にして、戦後になって急遽作られた球です。
技師A 「12Z-P1のヒーターを2.5V仕様にして、5本脚にして、カソードをヒーターの中点に繋いじゃえば、品不足の47Bの代りに使えるんじゃね?」
技師B 「うーん・・特性は結構違うけど、ま、鳴らない事はないよね」
たぶんこんな感じで作られた、47Bの代りの為だけに作られた球です。直熱管の47Bに合わせているので、本来の傍熱管としての簡単な使い方が出来ず、47B代替以外の用途は全くありません。しかしヒーターとカソード接続以外は、元の12Z-P1や、その後日本のラジオの決定的出力管として君臨した6Z-P1と全く同一ですので、不便を忍んで工夫すれば同様に使えます。ここでは47代替のちょっと特殊なカソード接続なのを活かし、ただでさえ1.5Wしか出せない出力を、一滴も無駄なく取り出す為に、固定バイアスで使っています。
出力トランスはラジオ用の、インピーダンスが12KΩの物ですが、他の出力管でも使える様に7kΩのタップも出ていたので、切り替えスイッチでここに第2グリッドを繋いで、UL接続風な動作も選択出来る様にしてあります。
電源整流は定番の12F(イチニエフ)を使いたかったのですが、ちょっと電流が足りませんので、改良型の80HK(ハチマルエイチケー)を使っています。ラジオ用トランスと80HKですので、当然半波整流です。
「ラジオ用部品と回路なので半波整流、しかもチョーク不使用」というコンセプトの為、電源のリップルフィルターには半導体を使い、大掛かりな物になりました。
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